訳詞(やくし)とは、外国語の歌詞を、元のメロディのまま歌えるように日本語などに書き直すことです。
意味を正確に伝える「和訳(対訳)」とちがい、訳詞では「音の数に言葉を合わせる」「言葉のアクセントを旋律に合わせる」「伸ばす音に合う母音を選ぶ」ことが優先されます。そのため、元の歌詞と一語ずつは対応しないのがふつうです。
- 和訳=読んで意味がわかる訳(歌わない)
- 訳詞=歌って意味が伝わる訳(歌う)
- 練習は「1番のサビだけ」から始めるのが近道です
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この記事は、テレビ東京『開運!なんでも鑑定団』のエンディングテーマ(2021年・2025年)を作詞作曲し、ボイストレーナーとして30年・延べ5万人以上に歌を教えてきた、作詞コース講師のたーなー先生がまとめました。
訳詞とは|辞書の意味と、現場での意味
辞書では、訳詞は「歌詞を翻訳すること。また、その翻訳した歌詞」と説明されます(デジタル大辞泉)。
音楽の現場では、もう一歩ふみこんで「元の曲のメロディを変えずに、その言葉で歌えるようにした歌詞」を訳詞と呼ぶことが多いです。海外のミュージカルやアニメ映画の日本語版の歌、洋楽の日本語カバー、合唱曲の日本語版などがこれにあたります。
和訳(対訳)と訳詞のちがい
- 目的:和訳は意味を正しく伝える/訳詞は歌って伝える
- 言葉の長さ:和訳は自由/訳詞は音符の数で決まる
- 元の言葉との対応:和訳は一語ずつに近い/訳詞は1行・1フレーズ単位で置きかえる
- 大事にするもの:和訳は正確さ/訳詞は歌いやすさ・聞き取りやすさ・曲の気持ち
CDの歌詞カードの「対訳」は和訳、日本語版で歌われる歌詞は訳詞、と覚えると区別しやすいです。
訳詞がむずかしい3つの理由
1. 音の数が足りない
英語は1つの音符に1語(たとえば love)が乗りますが、日本語の「あい」は2音、「あいしてる」は5音です。同じ音符の数に、日本語は言える量が少なくなります。だから訳詞では、伝えることを1つにしぼります。
2. アクセントがぶつかる
日本語には言葉ごとの高低(アクセント)があります。旋律が上がる所に、本来下がる言葉を置くと、聞いた人に別の言葉に聞こえることがあります(例:「雨」と「飴」)。
3. 伸ばす音に合う母音が限られる
長く伸ばす音やいちばん高い音は、「あ」「お」が歌いやすく、「い」「う」は細くなりがちです。サビの決め所に、どの母音を置くかで歌いやすさが大きく変わります。
メロディに乗る訳詞の作り方4ステップ
ステップ1 元の歌詞の「言いたいこと」を1行1つに書き出す
まず和訳を作り、各行の言いたいことを短い日本語で1つずつ書き出します。ここではまだ音に合わせません。
ステップ2 音符を数えて「言える文字数」を出す
1行ごとに音符の数を数え、ひらがなで何文字入るかを書きます(「ん」「っ」「ー」の扱いも決めておきます)。
ステップ3 言いたいことを、文字数に合わせて言いかえる
ステップ1の中から、その行で一番伝えたいことを1つ選び、文字数に収まる言葉にします。入りきらないことは、前後の行や2番に回します。
ステップ4 歌って、録って、聞き直す
自分で歌ってスマホで録音し、聞いた人に正しい言葉で聞こえるか、伸ばす音の母音が歌いにくくないかを確かめます。紙の上でよく見えても、歌うと聞き取れない言葉は直します。
たーなー先生の現場から
作詞のレッスンで、言葉を音に乗せるときに一番多いつまずきは「言いたいことを全部入れようとして、音が足りなくなる」ことです。訳詞でも同じで、1行に1つにしぼると、急に歌える歌詞になります。紙の上で書き上げたら、必ず声に出して歌ってみてください。
ステップ4の「歌って直す」を、先生と一緒にやってみませんか →
メロディが先にあって言葉をはめる考え方は、曲先作詞のやり方でもくわしく書いています。パートごとの役目はDメロとは?曲の構成をご覧ください。
初心者が練習するなら「1番のサビだけ」から
- まず4行から8行のサビだけを訳詞してみる。全部を訳そうとすると、途中で言葉の数がそろわなくなりやすい
- 練習には、作詞者が亡くなってから長い年月がたった古い民謡や讃美歌など、著作権の保護期間が切れた曲を使うと安心です
- 今の洋楽を訳詞して、人前で歌ったり、ネットに出したりするときは、元の曲の権利者の許可が必要になることがあります(次の節)
訳詞と著作権|人前で歌う・公開する前に
- 訳詞は、元の歌詞をもとに作る「翻訳」にあたるため、元の歌詞が著作権で守られている間は、訳詞を作って公開することに権利者の許可が必要です(著作権法27条・28条。くわしくは文化庁や JASRAC の案内で確認)
- 自分の練習のためにノートに書くだけなら、ふつうは問題になりません
- 発表会・動画・配信・CD などで使う前には、元の曲の権利の状態を確かめてください
自分で訳詞・作詞をやってみたい方へ
言葉を音の数に合わせ、アクセントと母音を選ぶ力は、日本語の作詞の基本とまったく同じです。作詞作曲スクールの作詞コースでは、たーなー先生がオンラインの個人レッスンで、書いた歌詞を一緒に歌いながら直していきます。
作詞コース(オンライン個人レッスン)
- 講師:たーなー先生(『開運!なんでも鑑定団』エンディングテーマの作詞作曲)
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よくある質問
Q1. 訳詞と和訳のちがいは何ですか?
A. 和訳は意味を正確に読むための訳、訳詞は元のメロディのまま歌うための訳です。訳詞は音符の数に合わせるため、元の歌詞と一語ずつは対応しません。
Q2. 訳詞と翻訳はどうちがいますか?
A. 翻訳は文章全体の言いかえの大きな呼び名で、訳詞はそのうち「歌詞を訳すこと」です。現場では、とくに「歌えるように訳した歌詞」を訳詞と呼ぶことが多いです。
Q3. 訳詞の読み方は?
A. 「やくし」と読みます。訳詞をする人を「訳詞家(やくしか)」と呼ぶこともあります。
Q4. 英語の歌を日本語で歌えるようにするコツは?
A. 1行に伝えることを1つにしぼり、音符の数に合う文字数で言いかえることです。伸ばす音や高い音には「あ」「お」の母音を置くと歌いやすくなります。
Q5. 訳詞した歌を動画で公開してもいいですか?
A. 元の歌詞が著作権で守られている間は、権利者の許可が必要になることがあります。公開の前に、元の曲の権利の状態を確かめてください。
Q6. 訳詞の練習は、作詞のレッスンで相談できますか?
A. 作詞コースの無料体験(25分)で、書きかけの歌詞を見ながら、言葉を音に合わせる練習から始められます。
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