井上 陽水の底知れぬ作詞の世界

日本人シンガーソングライターの大御所の名前を挙げなさい、というクイズがあったとしたら、真っ先に名前が挙がるシンガーソングライターの一人が、井上 陽水です。

歌手であり、作詞家、作曲家であり、音楽プロデューサーでもあります。
自分で作って自分で歌うだけではなく、多くの(本当に多くの)歌手に楽曲を提供しています。作詞・作曲を担当することもあれば、作詞だけ、あるいは作曲だけを手掛けることもあり、作詞家としてのヒット作も数多くあります。

最もよく知られているのがPUFFYのデビュー曲「アジアの純真」ではないかと思います。
北京…から始まる冒頭の歌詞は、作曲を担当した奥田民生のデモテープでの鼻歌がそういう歌詞に聞こえたから、そのまま使ったのであって、別に意味はないそうです。言葉遊びに近いものがあります。

1973年にミリオンセラーを記録したアルバム「氷の世界」の表題曲には、リンゴ売りが登場しますが、このリンゴ売りについても、井上 陽水は「どういうわけかリンゴ売りが出てきて、はっきりとしたイメージななかったけど、リンゴ売っててもいいかなと思った」と後述しています。フィーリング優先です。

歌詞の意味や内容よりも、リズム感や韻を重視するのは、井上 陽水の歌詞の特徴でもあります。

例えば、同じくシンガーソングライターの大御所、松任谷由実の場合は、歌詞は一編の詩のような完成度があります。

井上 陽水の場合、歌詞だけ読むとツッコミどころが満載です。それなのに、曲にのると音と一体化、いえ、それ以上にパワーアップして耳に届いてくるのです。恐るべし井上 陽水。まさにシンガーソングライターの神髄と言えるでしょう。

そんな井上 陽水の楽曲の中で、私が最も好きなのは、中森明菜が歌った「飾りじゃないのよ涙は」です。この歌は作詞も作曲も井上 陽水。陽水がセルフカバーもしています。そして、「飾りじゃないのよ涙は」の歌詞は、歌詞だけ読んでいても完璧なのです。

意味も内容も辻褄もちゃんとあり、リズムもあって、まさに一編の詩。その完璧な歌詞が曲にのるのですから、もはや無敵です。井上 陽水はやはり底が知れないシンガーソングライターなのです。

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